一切経。そして雨の鎌沼。

1年ぶりに一切経へ。

歩いたときの出来事や、その時の感情を覚えている山歩きはたくさんあるのですが、その中でも特別に楽しかったと覚えていることのひとつが、一切経と鎌沼です。

「魔女の瞳」とも呼ばれ、観光名所としてたくさんの人が訪れる一切経の火口湖は、それは見事なものですが、一切経と鎌沼での体験をよく覚えているのは、その山行で見ることのできる景観が物語性にあふれているからでしょう。

多くの方が一切経山をピストン。あるいは反時計回りに一切経と魔女の瞳を目指して周回しますが、ここでの自分は時計回りに歩くのが好きです。

ビジターセンターから時計回りに歩くと、西吾妻山周辺独特の背の低い山林を抜け、火山特有の分岐点から開けた湿原。そして鎌沼へ抜けていきます。

背の低い山林や湿地帯では、めまぐるしく変わる植生を楽しむことができます。

そして鎌沼。短い時間にはなりますが、山に囲まれた沼のほとりを歩くと、ふだんの喧噪を忘れさせてくれます。

また、ここまで来ると高地特有の雰囲気を味わうこともできます。

今回、何より楽しかったのは、雨の中を歩いたことになります。

鎌沼が山に囲まれているからでしょうか。
雲の動きを眺めていると北の山から激しい雨音が。あるいは、西の山から激しい雨音が聞こえてきて、それから降り出す。
そんな様子の中で鎌沼を眺める。

なんと心地良い時間。

めまぐるしく変わる山の天気が心地良いと感じることは、あまりないでしょう。

しかし、大きな雨粒、小さな雨粒、そのひとつひとつが生み出す音。
そして雲の…いや大気の動き。

そんな中に身ひとつで、すべてを受け止めるのはとても気持ちいい体験でした。

一切経へ登ると、山頂では風のない、しかも雨ひとつ降らない、魔女の瞳が待っていました。

瞳に映る雲の動きを見ながらお昼を楽しむことができました。

どこまでも魅力的な魔女です。ずっと眺めていたくなる。

吸い込まれそうな碧い瞳は、本当に魅力的です。
しかし、ここにずっといるわけにはいかない。そう遠くないところから雷の音がします。

小一時間ほど過ごした後、また来るねと告げ、後にします。

今回は雲の動きから歩くことを断念したけど、次は、東吾妻も歩いてきます。

吾妻山の魔女は無事降りるまで着いてきたくれたようで、最後まで楽しませてくれました。

また、会いに行きます。