雪板は、ざっくり言うとバインディングのないスノーボードです。
スノーボードのように板と足を固定するバインディングがなく、サーフィンのように板の上に乗っているだけなので、板と一体化した動作を要するトリックや激しいアクションをするのは難しいけど、乗って降りてを繰り返しながら気軽にすべることができます。
足と板とをバインディングで固定されないということは、スピードを出すにも相応のテクニックが必要だし、なにより体が制限されません。危ないと思う前に、板から降りてしまえば良いという安全性も持っています。
雪板を知ったのは、おそらく10年くらい前。
何かの雑誌で、「スケートボードの車輪部分を外して雪の上をすべる遊び」として紹介されていたように覚えています。
よほど雪が降る地域に住んでいるのであれば別ですが、スキーやスノーボードは、結構な装備を持ってゲレンデや雪山まで移動しないと楽しめない。
もちろん、ゲレンデや雪山の楽しさは格別です。
ただ、気軽に楽しむ方法として雪板もおもしろそうだと感じたわけです。
あれから時間が経って、雪板は薄い板を重ねて曲げたり、かたちにこだわったり、浮力を増やすために大型化したりと、スケボーの車輪部分を外したモノから、より雪を楽しめるモノへと変化しました。
それでも、まだまだシンプルな構造に変わりはありません。
完成品を購入するだけでなく、ワークショップに参加することで自身の乗る雪板を制作できるプログラムが、長野県の芽育雪板や山形県のBUDDHA BLANKらによって提供されています。
いくつものワークショップの中には、板を切り出すところからはじまるものもあります。
参加した雪板づくりワークショップ in 野川まなび館では、あらかじめ切り出しと曲げの工程が行われた板に、補強材として薄い布を貼り付けてフィニッシュまでの工程を体験するものです。
ワークショップの会場は山形県長井市にある、野川まなび館。
山形県南部にある2市3町が域内の観光振興を進める、やまがたアルカディア観光局が主催です。
やまがたアルカディア観光局では雪板づくりワークショップだけでなく、ウォーターアクティビティやスノーアクティビティ、農業体験など、地域資源を使った多岐にわたるプログラムを提供されています。
まなび館に入ると、何枚もの雪板が展示されています。
昨年は、ワークショップを通して100本以上が制作されたそうです。
ワークショップの工程は主に3つ。
- 補強材になる布を水性のニスで板に貼りつける
- 紙やすりで研磨して表面をなめらかにする
- 反対の面もニス塗りをする
1のニス塗りと2の研磨を繰り返すシンプルなプログラムです。
ベースとなる板は、会場となる山形県長井市で伐採された杉です。
その中でも、出荷されることのない間伐材。この間伐材の板から、雪板のかたちを切り出す作業は地元の企業という、環境を配慮したものです。
ワークショップでは、90cmと110cmの長さから選ぶことができます。
今回選んだのは、110cmのもの。
板の長さは、雪の上での浮力に関係しています。
110cmの長さであれば、大人の膝くらいの深さまで楽しむことができるそうです。
準備されていた雪板の基となる加工済の間伐材。
当然、間伐材の中でも出荷されない部分からつくられているので、凹凸や穴があるのですが、そのあたりは、削りや穴埋めの作業をしてくださっているそうです。
ここでつくったものは正真正銘の、世界で1枚しかない自分だけの雪板ということになります。
この雪板に、持ってきた手ぬぐいをしわがよらないようにのせて、水性のニスを塗って乾かして、表面を研磨する作業を繰り返します。
単純な作業ですが、雪と接する板の表面をいかになめらかにするかで、すべりに影響が出ます。
平らであればあるほど、なめらかであればあるほどよくすべるし、乗り心地が良くなる。
ですから、やる方としても真剣です。
この冬の楽しさを決める重要な仕事なので、真剣になるのは当然ですが、ニスを塗っているときのハケの感じや、研磨しているときの削りすぎないかのドキドキ感。研磨した後の感触を通して、作業と結果の関係に多くの気づきがあり、飽きることはありません。
何度もニスを塗り、研磨して、十分に乾燥させれば完成。
完成した雪板の表面は、おかげさまでツヤツヤのスベスベです。
使う時には固形ワックスを塗ると、すべりが良くなることでした。
完成後のメンテナンスは、今回のワークショップで体験した研磨と水性のニスを塗ることで、板が長持ちするだけでなく、すべり心地にも関係してくるそうです。
研磨はサンドペーパーの120番で荒く削り、400番で整えます。
水性のニスを使っていることからサンドペーパーは濡らさずに使います。
直射日光の当たらない、風通しの良い屋外で行うのが良いと思います。
オフシーズンに入るタイミングでメンテナンスしておくと良いですよ、とのことです。
雪板をつくる作業そのものの楽しさはもちろんですが、インストラクターさんから聞く他のワークショップやツアーのお話しや、地域のお話しがとても楽しく、退屈なんてするヒマのないワークショップでした。
冬季は、乾燥するのを待っている間に雪板体験もできるそうです。
今回、自分が参加したワークショップはフィニッシュの工程を体験するプログラムです。
材料費と体験料に消費税がふくまれ、110cmサイズが12,000円。90cmサイズは8,000円です。
板を切ったり曲げたりするところから体験したい方は、このやまがたアルカディア観光局のワークショッププログラムに協力するBUDDHA BLANKや、芽育雪板が切り出しからのワークショップを実施していますので、調べてみてください。
これからじっくり乾燥期間に入りますが、雪板に乗るのが今から楽しみです。