コンヴィヴィアル・テクノロジーを読了。テックやアート、エンタテインメントに関わる人にぜひ読んでいただきたい1冊です。

ここ1年くらい「技術と技能」についての疑問をはじまりとして、「テクノロジーはわたしたちの毎日を幸せにしているんだろうか?」そんな問を持って過ごしていました。

個人的な話しですが、映像作家として映像やデザイン、インタラクティブアートをつくる中、山に限らず自然の中を歩くことが好きで、自然を観ながら歩いていると、あるいは山の上から人びとのいとなみがつくりだした街並みを見ると、現実の距離とは異なる精神的な距離に安堵を抱くのと同時に、手元のカメラやスマートフォンといったテクノロジーの塊の存在を強く感じます。

このテクノロジーの塊は自分に創作の喜びだけでなく、人間同士のつながりをつくっているわけですが、ひんぱんに届く通知や、山の上でも仕事の連絡を届けてくれるわけです。

当然、芸術や表現はこれまでテクノロジーの発展とともに幅を広げてきました。

芸術や表現は人びとの生活に精神的な豊かさや、楽しさ、新しい発見を提供してくれるわけです。

しかしながら「技術と技能」…つまり方法論と方法に縛られ、それによって精神や身体が制限を受けているんじゃないかとも、同時に感じていました。

この本で筆者が指摘したことから自分としての解釈を述べるなら、「技術と技能を使って道具や仕組を生み出す側が、利用者の自由を奪わない、むしろ自由を拡張するような方法の提供について考慮する必要性と、その試行錯誤が情報飽和時代のテクノロジーとアートのあり方」について指摘しているのではないでしょうか。

技能は誰もが自由に、そしてふだんの生活を続けながら習得可能な時代になりました。
また、テクノロジーに限らず技術もかつてのように大きな負担、特に時間や距離そして金銭的な部分を強いられることなく使うことができるようになりました。

わたしたちはモノゴトに限らず、仕組や表現を拡張する自由を手にしたわけです。

当然のことながら、生み出す自由はあります。

一方で、生み出されたものがわたし達を束縛し、自由を奪っていることもあるでしょう。

つくり手として、生み出す者として、クリエイティブとして人と人との関係性について見つめ直すタイミングが訪れているように感じます。

そのことについて指摘する本書は、すべてのつくり手にとっての羅針盤とは言えないながら、意識して欲しいことについて、時流の要請とともに求められる視点について、指摘しているのではないでしょうか。

安くはないし、薄くもない本ですが、つくり手とつくり手を目指す方々には、まさに今読んでいただきたい1冊です。

これもまた個人的な話しですが、この書籍の表紙が数年前に開催させていただいたアイデアソンのフライヤーに色調やデザインがよく似ていることが、技術と技能と人と人とを意識して取り組んでいただきたいというコンセプトで企画したアイデアソンCONNECTのイメージと似ていたことに、とてもうれしく感じました。

ふだん聞き慣れない言葉が出てきて、ところどころつまづくこともあるかもしれません。
繰り返しになってしまいますが、テックやアート、エンタテインメントに関わる多くの方にぜひ読んでいただきたい1冊です。